こちらのスイーツあり、インドカリーありのお店は、新宿「中村屋」がモデルかと思われます。
今日のドラマの「川村屋」には、創業者であるマダムのお祖母さまの肖像画が飾られていました。
実際には肖像画ではなく、高村光太郎と並んで、日本を代表する彫刻家荻原碌山(ろくざん)が、相馬黒光氏をモデルにしたといわれる彫刻『女』が有名です。
私がまだ幼かった頃。
TBSポーラテレビ小説で「パンとあこがれ」というドラマがありました。
これは相馬黒光氏をヒロインにした女一代記のドラマです。
母が観ていたこのドラマ、幼心の私の記憶にところどころ刻み込まれています。
仙台の士族の娘であったヒロインが、女学校を退学し見合い結婚後パン屋を営むといった内容でした。
後に知ったのですが、脚本は山田太一氏。
なにしろ、観ていた私は幼かったものですから、詳しい内容は覚えていません。
ヒロイン夫婦がパン屋を成功させ、その後娘婿のインド人の協力でインドカリーを店に出すといった物語でした。
そして、宇津宮雅代さん演じるヒロインは、夫以外に確か好きな人がいたような気がします。
昭和44年のドラマ。
不倫を描いていたかどうかは覚えていません。
しかし現実の話は。
黒光(こっこう)は宮城女学校を退学後、横浜英和フェリス女学校に転校。その後明治女学校に転校し、卒業しました。
その明治女学校では、島崎藤村や国木田独歩と交わる文学少女でした。国木田独歩の最初の妻佐々城信子(有島武郎『或る女』のモデル)は黒光の従妹です。
余談ですが、佐々城信子は『なつぞら』工藤阿須加さん演じる佐々岡信哉のモデルではないかと思われます。
卒業後、黒光は相馬愛蔵と結婚し、本郷にパン屋を買いとるのです。
後に新宿に移転。
これが「中村屋」です。
学生の頃から文学に傾倒していた黒光は、店が成功後、文学以外に絵画などの芸術サロンを作り、高村光太郎や松井須磨子に交流の場を提供しました。
その中でも荻原碌山は黒光から大きな影響を受け、芸術への情熱に目覚めています。
碌山は、黒光をモデルにした彫刻「女」を制作直後の明治43年、31歳の若さで急逝します。
ドラマ「パンとあこがれ」でどのように描かれていたのか、全く覚えていないのですが、現実には黒光の夫、相馬愛蔵は浮気をしていた。
そして彫刻家荻原碌山は、3歳年上の黒光に恋をしていた。
彫刻「女」の黒光は、手をしっかり後ろに組み、顔は天井に向けられています。
「妻」という立場に縛られているものの、希望に向かって仰いでいるといった表現でしょうか。
碌山の黒光への思いがぶつけられた作品です。
「パンとあこがれ」は、DVDある?
白黒の時代だもの、ないですよねぇ・・・
このドラマに不倫の話が折り込まれていたかどうか記憶にない。
2007年に平山浩行さん主演で「碌山の恋」というドラマはあるのですが、観てない。
こうなったら相馬黒光モデルの小説「蝶のゆくへ」を読みたくなっちゃうじゃないですか。
不倫をしていたのかどうなのか、とにかく相馬黒光氏は魅力的な女性です。
そして荻原碌山の作品を見たくなってしまうのです。
明日、新宿中村屋のインドカリー買ってこようかな。