今期のNHK朝ドラ「らんまん」
主人公は植物学者の牧野富太郎博士。
NHKBSプレミアムで牧野富太郎博士について考察していました。
ゲストの脳科学者中野信子さんも作家荒俣宏さんも、そしてメインパーソナリティの磯田先生も牧野博士の大ファンだそうです。
愛すべきキャラだった牧野博士はどんな人生を歩んでいたのでしょうか。
私はドラマ「らんまん」の今後のストーリーは存じ上げませんが、このブログでは史実としてのネタバレがございます。ご了承くださいませ。
目次
出生から小学校中退まで
牧野富太郎は高知県高岡郡佐川町の商家と酒造業を営む裕福な家庭で誕生しました。
文久2年4月24日。坂本龍馬が土佐藩を脱藩した1か月後のことでした。西暦ですと1862年5月22日。161年前の今日です。
ドラマでも描かれていましたが、牧野博士は幼い頃から草木に興味を示し、寺子屋でも秀でた才能をあらわしますが、学制改革によって小学校に通うようになると、授業のレベルの低さに失望し、わずか2年で中退することになります。
しかし家の財力で豊富な本や高価な顕微鏡などによって独学で植物学を学ぶのです。
帝国大学
牧野博士は19歳の時に初めて東京を訪れ、植物学を志すことを決意します。
東京の帝国大学理科大学(現東京大学理学部)植物学教室の矢田部良吉教授の教室に出入りできるようになります。
教室に出入りして文献・資料などの使用を許可され研究に没頭し、日本で初めてのムジナモを発見したことを学術論文で報告するなど、世界的に名を知られるようになります。
しかし明治23(1890)年、矢田部教授・松村任三教授らにより植物学教室の出入りを禁じられてしまいます。
「英雄たちの選択」では磯田さんが「東京大学の標本は税金を投入されてみんなで作っているわけですから、矢田部さんの私費で自分だけで作ったわけではないですよね。そこを支配してるからといって公開しないというのは今の感覚でいっても変ですよ。東京大学の先生くらいになると自分がプレーヤー一方ではなく、他の人の研究を助け協力するくらい手配師的なことがあるくらいでないと。」と熱弁されていました。
矢田部教授が退任した後に、牧野博士は助手として大学に勤務することになります。
矢田部教授退任後に主任教授となった松村教授に呼び戻された形ですが、この松村教授とはこの後も何度かぶつかることとなります。
裕福な実家は
牧野博士は実家の造り酒屋が裕福なことをいいことに、植物学の研究のために実家のお金を湯水のごとく使っていきます。
実家の経営は傾いていきます。
月給以上の借金を重ね研究に没頭する牧野博士。
実家では牧野博士の従妹が番頭と結婚し店の後始末をすることになります。牧野博士は実はこの従妹と祖母の命令で1度結婚していますが、祖母が亡くなった後に離婚しています。
借金からの脱出
牧野富太郎博士は、新聞で借金まみれの自分の窮地を発表し、寄付を募ります。
名乗りをあげてくれたのが実業家の久原房之助、そして神戸の資産家の御曹司京都帝国大学の学生池長
買い取った標本は池長植物研究所に所蔵されました。
2か月に1回しか大学に顔を出さないなどズボラな性格であった牧野博士は、その後も東京大学から追い出されそうになったりしますが、植物に対しての気持ちはズボラではありませんでした。
「世の中に雑草という名の草はない」という言葉を残しています。
牧野日本植物図鑑を完成させたのは70代の時でした。
牧野博士の妻と子どもたち
ドラマ「らんまん」で浜辺美波さんが演じてらっしゃる牧野博士の妻。
和菓子屋で働くその女性は、実は彦根藩主井伊家の家臣、陸軍省営繕元勤務小澤一政の娘です。
その妻との間に13人の子が生まれました。
妻のことをとても愛していたようで、発見した新種の植物に妻の名をつけることもありました。
牧野博士は10歳年下の妻よりずっと長生きして、昭和32(1957)年に満94歳で亡くなります。
なぜ朝ドラに牧野博士?
NHK朝ドラは「ゲゲゲの女房」や「まんぷく」のように、著名人の奥さんを主人公にする例がありました。
今回は、牧野富太郎博士の妻ではなく、牧野博士本人が主人公の朝ドラとなりました。
牧野富太郎博士を題材にしたNHK「歴史秘話ヒストリア」が放送されたのが2019年1月23日。
「歴史探偵」などもドラマと絡めた人物を放送しますが、先に放送された人物がまもなくドラマ化映画化になる例もあるようで。
なにより地元「朝ドラに牧野富太郎を」の会から熱烈なアプローチがあったことが想像できます。
個人的には、ドラマで佐久間由衣さん演じる綾(史実では富太郎の従妹、猶)が好きで、史実では牧野博士の最初の妻であり、その後牧野博士と離婚し番頭と再婚するという波乱万丈の人生の中で、家業を切り盛りしたということで、こちらを主人公にしても面白いドラマになったと思います。
ドラマ「らんまん」では主人公の名前は万太郎。
母の祖父が万太郎という名前でした。
私の曽祖父であるその万太郎は、牧野博士より少し後の慶応生まれで、牧野博士と同じように、90代まで長生きしたそうです。