いつも当ブログに訪問してくださっている 貯め代 (id:tameyo)さんから、お奨めいただき読んでみました。
それほど長い話ではありません。
あっという間に読めました。
ずいぶんと昔の作品です。
ただ、文語が難しく、読む作業は大変でした。
主人公の「お婉」は、野中兼山の娘。実在の人物です。
物語は「お婉」の一人称で語られます。
江戸時代初期の土佐藩家老の娘である「お婉」の語り口は、武士の娘らしく自分のことを最後まで「わたくし」と語り、奥様のことを「おかもじさま(御母文字様)」と呼ぶ。
しかも、昔の新潮文庫って(あの懐かしい黄色い紙w)字が小さ~い。
老眼に鞭打って読みました。
でも読みだしたら、とまらなくなります。
実話だということで、私は余計に興味がそそられました。
こんなことが江戸時代には当たり前のようにあったのです。
野中 婉(のなか えん、寛文元年(1661年) - 享保10年12月30日(1726年1月31日))は、江戸時代中期の土佐藩の女医。野中兼山の娘。母は妾の池氏。父の失脚によって、4歳から40代初めまで幽閉生活を送った女性として知られる。Wikipediaより引用
「お婉」は4歳から40代初めまで幽閉生活を送っていたにも関わらず、賢い兄からその幽閉生活の間も学問を教わり、また谷泰山との文通によって儒学や医学の指導を受けるのです。
釈放後、医師として開業し、名医として知られるようになります。
酷薄な運命に負けずに強く生きた素晴らしい女性!・・・ってだけではないのですよ。
恋愛に関してはかなりしたたかで、少女時代、娘時代、女盛り時代を幽閉の中で過ごした彼女は、妻帯者である谷泰山と文通の中で半ば妄想のような恋愛をします。
その手紙は多く残っており、それを元に大原冨枝が小説にしたわけです。
野中兼山一族幽閉之地碑
(高知県宿毛市)Wikipediaより
難しい文章に途中ついていけなかった私は「お婉」が医者だとわからなかった😓
薬剤師かと思って最後まで読んでました。
1971年には、岩下志麻さん主演で映画化されています。
ぴったり!
今この作品を映画化するなら?主演は沢尻エリカさん?
野中兼山(1615~1663年)という武士は、政治家でもあり南学者でもありました。
物語でも触れていますが、理想を掲げるあまり、自分の命だけでなく、家族すべての人生を大きく変えてしまいます。そしてそのほとんどが非業の死を遂げることになるのです。
兼山の父は、初代土佐藩主山内一豊に家老として仕えていた人物です。
父良明は、山内一豊の親戚筋でありながら、一豊の死後は浪人となり、早逝しました。
兼山は父の死後、その才覚ゆえに奉行として活躍するも、領民の反感や山内忠豊に出された弾劾状などのために失脚→幽閉→死去という運命をたどります。
なんだか土佐藩という地域は、幕末もそうだけど、血の気の多い武士がたくさんいるのか、揉め事がえげつない感じがするのは私だけ?
この野中兼山の物語だけでもとても面白いのですが、『婉という女』の本筋は、兼山の死後40年たってから、「お婉」がそこから生きようとし、野中家の誇りを守ろうとしたことなのです。
美しいだけではない「お婉」の心情が荒々しく、ふつふつと内面から炎が動く感じ。
家族が次々と亡くなり、愛する谷泰山亡き後も「生きる」ことを選びました。
読み終わった後の達成感が強烈でした。
そして野中婉という人物とそれを巡る人々、また作者の大原冨江さんの他の作品にも興味が沸いた私がいました。
でも、新潮文庫のこの小さな文字を読むのは、老眼ぎりぎりの作業だった(笑)
これ以上老眼が進んだら眼鏡の購入を検討します。
貯め代 (id:tameyo)さん、良い本をご紹介くださり、ありがとうございました。