80代のお母さまに認知症の症状がでてきた。
それを同居している著者の松浦氏(50代独身男)が介護する奮闘記です。
結論からいいますと、読んでよかったと思える本です。
今までたくさんの介護に関する本を読みましたが、そういった本とは一味違う内容でした。
著者が科学ジャーナリストという職業柄か、本の執筆に慣れているからか、自分の体験談なのに、文章だけを見ていると冷静で客観的。今までにないタイプの介護経験本だったからかもしれません。
「介護」という問題を日本全体で考えなくてはいけないという真摯な気持ちが伝わってきます。
目次
残念だった点
介護している方であれば一読して損はないと思える本です。
でも最初に、あくまでも私個人の感想として、2点だけ残念だったなと思ったことを記させていただきます。
タイトル
感傷的なタイトルに騙されてはいけません。
正直『母さん、ごめん。』というタイトルは不要だったと思います。
ずばり『50代独身男の介護奮闘記』でよかったのではないでしょうか。
内容は科学的で社会的で、とにかく冷静なのです。
『母さん、ごめん。』というセンチメンタルな言葉は似合わないと思います。
手をあげてしまったことがあるということなので、そのことへの謝罪の気持ちがあるのかなと思いますが。
でも松浦さんはこんなに頑張って介護された。
謝る必要はありません。
蛇足
最後の章で、「おまけ」と題して、お母様が大学を卒業した後に丸の内の大手企業でOLをしていらっしゃったその思い出話が語られています。
思い出というよりは、その企業で働く男性の悪口です(笑)
昭和30年頃。
その時代は当たり前だったかもしれない。
お母様がどんな人生を送られてきたのかという紹介であったかと思うのですが、この本にはそぐわなかったと思います。
介護に関わっている人たち
著者である松浦さんは、お母様の介護に携わってらっしゃる方だけでなく、介護職というのがいかに大変かということ、介護士もヘルパーさんも専門職であり、介護従事者すべての方のその有能さをリスペクトしていらっしゃいます。
途中、ケアマネさんの助言で担当医を変更されているのですが、決して悪くいうことなく、良いお医者さまに巡り合えたこと、それを導いてくださったケアマネさんに感謝されています。
お父様はすでに亡くなっていらっしゃいます。
妹さんや弟さんは、遠方であったり多忙であったりして、介護のメインを担うのは同居している松浦さんになるのですが、みんなが協力的であり、女性でないとやりにくい部分は妹さんがドイツからやってきてヘルプしてくださるというのは、とても恵まれていると思います。
ひとりで頑張りすぎた時期
料理が得意であるとか、好きであるとか、そういったタイプではなかったにも関わらず、松浦さんはとても真面目です。
「野菜は1日350g」「朝食に重点をおく」と決めて、それを忠実に守るのです。
お母様はかなり濃い味好みで、薄味の食事宅配サービスの味は受け付けません。
またお母様の排泄の失敗がかなり多くなります。
ウチの母もやらかしますが、その比ではありません。
最初はリハパンを拒み、介護する側の掃除洗濯の負担が大変なことになります。
次々に起こるトラブル。
お母様の症状は悪化するばかり。
山のように届く通販商品。
転倒からの脱臼。
異常なまでの過食。
預金残高の減少。
虫歯に血圧。
また転倒、今度は骨折。
ひとつの家族のひとつの時代が終わった
それでも公的保険制度で、ディサービスやショートスティ、介護用品レンタル、ヘルパーさんの協力などを利用して、なんとか2年半の自宅介護&松浦さんご自身のお仕事を両立させていくのです。
最後はアニメ『赤毛のアン』の最終回近くの「マシュウ我が家を去る」を脳裏に浮かべながら、お母様が家を去り施設に入居されるのを見送りました。
残されたのは、15歳の老犬。
「今度は犬の介護かな。」と松浦さん。
私の感想
高齢者の介護は事業だ。感情とは切り離して、硬度に社会的な事業として考えなくては、完遂は覚束ない。本文より