夏スクーリング大学レポートの題材にしたのは川端康成の『古都』でした。
初読は10代の頃。
この年齢で再度読み直した『古都』の感想を、備忘録としてブログに残しておきたいと思います。
目次
映画化とテレビドラマ化
読んだことはなくても、聞いたことはある…という方多いと思います。
読んではいないけど、映画で観たよという方もいらっしゃるかもしれません。
私世代では、山口百恵さんが引退する直前に撮影された最後の映画として有名です。
私が『古都』を知ったのは、山口百恵さんの映画の少し前。
今年4月に亡くなった岡江久美子さんが主演されたドラマでした。
一卵性双生児の姉妹が離れ離れになった物語で、山口百恵さんも岡江久美子さんも1人2役で演じてらっしゃいました。
ドラマになったのは過去に6度もあるのです。
一番新しいのは上戸彩さんが主演でした。
舞台にもなっていますし、最初の映画は岩下志麻さんが主演でした。
それだけ愛されている物語なのです。
小説で読む『古都』
とにかく美しい描写。
そして京ことば。
この物語の主人公は、京都の呉服問屋のお嬢様として育った千重子と山中で暮らす貧しい苗子の生き別れた姉妹ではなく、京都そのものです。京都そのものが主役なのです。
四季のうつろいにのって進む物語の世界は京都の街が目に浮かぶようです。
華やかな祭りと霊界すら感じる北山杉の情景。
年中行事や名所を随所に散りばめたあたりは、意地悪な見方をすれば「京都観光PR小説」です(笑)
読み終わった後、京都に旅行したくなります。
登場人物に意地悪な人はいません。純粋な人ばかり。
千重子とその育ての両親の優しい心も、その優しい人たちを気遣う苗子も、いずれも共感できるし、応援したくなる。
男性陣が多少不甲斐ないと思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、昭和30年代、そんな時代だったのかも。
ただ川端康成はこの作品を執筆中、健康状態にかなり問題があったようで、『古都』の執筆期間中は記憶がほとんどなく不気味なほどだったと川端本人が「あとがき」で語っています。
記憶がほとんどないままに書き上げた物語がこんなに名作になるとは。
『古都』は海外での評価が非常に高く、この作品がノーベル文学賞授賞対象作品になりました。対象作品は『雪国』『千羽鶴』『古都』と、短編『水月』『ほくろの手紙』などで『伊豆の踊子』は入っていないのです。
2016年製作の映画『古都』
山口百恵さん主演の映画を観たいと思ったのですが、Amazonプライムでは無料対象作品ではありませんでした。
なので、無料対象だった2016年『古都』を観ました。
松雪泰子さんが主演です。
こちらは、過去の2作の映画と違って、舞台は平成。2016年そのものです。
で、松雪泰子さんは千重子と苗子の2役なのですが、川端康成『古都』のその後が描かれています。
過去の自分を思い出す時は、回想シーンとして若い頃の千重子と苗子を蒼れいな蒼あんなさんの双子姉妹が演じられていますので、それは面白かった。
千重子の娘を橋本愛さんが、苗子の娘を成海璃子さんが演じられています。
で、舞台がなぜか京都から最後はパリへ。
パリで日本舞踊を橋本愛さんが踊るのですが、これがちょっと残念だった。
お着物姿がとても美しい橋本愛さんですが、日本舞踊は難しいよね。
土屋太鳳さんにやってほしかったかな。
2016年という設定にしては、内容が古かったように思います。
親のコネで就職するとか、商売のことを考えてお見合い結婚するとか。
だいたい原作『古都』の舞台が昭和36年なので、千重子役が松雪泰子さんというのが無理があるのです。松雪泰子さんが千重子の娘役で、千重子の孫役が橋本愛さんなら納得ですが。
この続編のような2016年版『古都』を川端康成がどう思っているのかはわかりませんが、私としては、千重子の幸せを思い身をひいた苗子がその後幸せな家庭をもったという設定に安心しました。
おまけ『京都人の密かな愉しみBlue修行中「送る夏」』
『古都』とは全く趣が違うのですが、京都の町を楽しみたいのなら、NHKBSプレミアムのドラマ『京都人の
2017年に放送されたのですが、明日8月15日(土)午後2:00~午後4:00に再放送されます。
今は結婚して女優休業状態ですが、相楽樹さんが出演しています。(現在の釉子役は吉岡里帆さんです)
最後までお読みくださりありがとうございました。
今日も猛暑日になりそうです。
熱中症にお気をつけください。