NHK朝ドラ『虎に翼』面白いですね。
皮肉にも敗戦を機に日本国憲法が公布され、民法改正が実現しました。
主人公寅子(三淵嘉子さんモデル)はそれに関わってきました。
昭和よりもっと昔、寅子が生まれるもっと前、明治時代にすでに国民の不平等に批判的な意見を訴える人がいました。
堺利彦は明治36(1903)年4月、『家庭雑誌』を創刊しました。
徳富蘇峰が創刊した『家庭雑誌』とはまた別です。タイトルが一緒で紛らわしい💦
『家庭雑誌』は、明治36(1903)年4月に第1巻1号を発行し、それは明治42(1909)年の第6巻第4号まで続きました。
目次
夫婦間の階級制度
『虎に翼』の主人公寅子、その母猪爪はる(石田ゆり子さん演)は、賢く仕事のできる女性ですが、戦前の日本では「1人前」とは認められていませんでした。
旦那様の庇護の元でしか生きられないという世間の認識でした。
寅子の大学の同級生梅子さん(平岩紙)も然り。旦那様はもちろん息子にも馬鹿にされ、あげくに旦那様に新しい女性ができたからと離縁されます。
「女性は無能力者」「女性は責任能力が制限される」と法律で定められていました。
財産の利用、負債、訴訟行為、贈与、相続、身体に
明治時代における雑誌『家庭雑誌』では、家庭においての階級制度について提言しています。
女性は愛のためでなく、養ってもらうために結婚している。「夫は公の為に特殊の才能を発揮し、妻は又新しい次の時代を作るために、子孫を養育する」というのが昔の平等な自然分業であったが、今や私有財産の発生でそれが支配関係にかわってしまっている。いわば「女子は一個の私有財産」になったのである。
明治37(1904)年2月『家庭雑誌』第2巻第2号 堺利彦「家庭に於ける階級制度」
第4巻第2号「良妻賢母主義」では「良妻賢母主義とは即ち男子国の奴婢養成法である」と手強き攻勢で発言しています。
親子間の階級制度
また、同じく寅子の大学の同級生よね(土居志央梨さん演)は、貧しさがゆえに10代前半で親に売り飛ばされそうになるところを逃げて、東京のカフェでボーイとして働くようになりました。
昭和初期の日本、「昭和恐慌」によって、日本経済が低迷を極めていた時期、よねと同じような境遇の娘がたくさんいました(よねの姉もまた親に売られました)
親子関係もまた家庭内の階級制度であると、『家庭雑誌』で指摘しています。
「愛情的の方面」が「経済的方面」によって「著しく汚され、もしくは傷つけられていると。
子は親の私有物になりました。
娘を売るとか男子を養子にとるといった行為です。
此種の罪悪は、多くの生活の不如意から起こって来る。明治37(1904)年4月『家庭雑誌』第2巻第4号 堺利彦「親子の関係ー家庭における階級制度二ー」
第三の階級制度
堺利彦は、「夫婦」「親子」以外に「第三の階級制度」に言及しています。
たとえば「女中」です。
朝ドラ『虎に翼』では、華族令嬢涼子の側に仕える「たま」を思わせます。
家族同様と云ふ中に主従と云ふ様な昔の考へが残って居て、妙に一種の階級制度を為して居る。明治36(1903)年12月『家庭雑誌』第1巻第9号 堺利彦「下碑問題」
戦後華族制度が廃止され、『虎に翼』では涼子様がどのような生活を送っていらっしゃるのか。ドラマの今後が気になります。涼子様再登場はある?
堺利彦
こういった階級制度を救済するために、堺利彦は「社会主義への実行」を唱えます。
没落士族の三男として現在の福岡に生まれた堺は、新聞記者や教員、時には小説の執筆もしますが、その後日本社会党を結成し幹事となり、投獄なども経験し、後に東京市会議員になります。
『家庭雑誌』は第6巻4号が長期停止処分を受けて、その後復活することはありませんでした。