暮らしと勉強、猫と一緒に~Bettyのブログ

実家の母を介護するために北海道から引っ越してきました。その介護も終わり、片づけと大学通信教育部の勉強と猫と。そんな雑記ブログです。当サイトはアフィリエイト広告を利用しています。

NHKアナザーストーリーズ「旧石器発掘ねつ造事件」

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昨夜は『竜の手』が最終回で2時間SPだし、三浦春馬さん出演の『おカネの切れ目が恋のはじまり』が始まるし、おまけにNHKアナザーストーリーズ運命の分岐点「偽りの“神の手” 旧石器発掘ねつ造事件」をどうしても見たかった。

『竜の手』はリアルタイムで見て、他の2番組を録画しました。

 

『竜の手』は視聴率がずっと振るわなかったようですが、ネットでの感想は大絶賛!私もずっと釘づけで、おもいきり涙しました。

『竜の手』を見終わって、すぐにNHKアナザーストーリーズを観ました。

 

目次🔨旧石器発掘ねつ造事件🔨

 

旧石器発掘ねつ造事件

皆様は「旧石器発掘ねつ造事件」を覚えていらっしゃいますか?(「前期旧石器遺跡捏造事件」とも)

 

■旧石器発掘ねつ造事件■
2000年11月に毎日新聞のトップ面を飾った、前期旧石器時代の地層に石器を埋め込んで遺跡をねつ造した事件。

この事件、関係者だけでなく、考古学を学ぶたくさんの人、そして教科書にまで大きな影響を与えたのです。

 

「F」という男

番組では実行したその人を「F」と呼んでいます。私は本名を今でも覚えています。

彼は当時東北旧石器文化研究所副所長でしたが、大学で考古学を学んでいたとか、ましてや大学で教えていたとか、そういった考古学者や歴史学者ではなく、あくまでも考古学に関してはアマチュアで趣味で遺跡発掘に参加していたのです。

「F」は1974年以降、石器探しの名人として活動し、発見効率が驚異的に高かったことから「神の手=ゴッドハンド」と呼ばれるようになります。

 

宮城県上高森遺跡では1993年に40万年前、1994年に50万年前、1995年に60万年前、1998年に60万年前以上、1999年に70万年前に遡る埋納遺構と石器を発見し、原人段階の文化としては世界の遺跡にはない特異な文化であると注目されます。

 

毎日新聞北海道支社のチームがあばく

考古学研究者の指摘を受けた毎日新聞北海道支社がチームを編成して取材に着手します。

2000年10月22日、上高森遺跡で張り込みを行い、「F」が穴を掘り遺物を埋めている動画・写真を撮影し、11月4日の取材でその動画と写真を「F」本人に見せると彼は頭を抱え込み白状し、ねつ造が発覚することになります。

「F」が地層が露出している場所に縄文時代の石器や石器片、剥片などを埋め込むことで始まったねつ造は、次第に発掘調査期間の早朝に(夜だと暗いので)調査している面に石片など(「F」個人が趣味で持っていたらしい)を埋め込むようになり、発覚した時には小さな穴を掘りそこに石器を埋め込んでいたのです。

チームの記者たちは考古学に関しては素人です。

その素人たちの「ひとりの人が関わるだけで、次々と発見できるのは不自然だ」という素朴な疑問が解決へと導いたのです。

 

ねつ造を見破ることができなかった背景

正直、「F」のやり方はねつ造と呼ぶにはあまりに単純で稚拙だと私ですら思うのですが、なぜ当時の考古学者たちはそれを見破ることができなかったのでしょうか。

「F」が発掘した石器類は、鎌田俊昭(東北旧石器文化研究所理事長)、梶原洋(東北福祉大学助教授)、岡村道雄(東北歴史資料館学芸員文化庁審議官)、芹沢長介東北大学東北大学名誉教授)らが学問的な裏付けをし、国家的な権威づけが行われたのです。

1960年代から芹沢長介と杉原荘介(明治大学助教授)の間に、日本に前期旧石器が存在するかという「前期旧石器存否論争」がありました。

日本列島には相当古くから人間がいた可能性を指摘していた芹沢長介に対して、杉原荘介は「前期旧石器の存在を否定するのではなく、その存在を明確にできる資料がない」という考えでした。

「F」のねつ造による遺物発見は、縄文時代よりもっと前、70万年前の前期旧石器時代に日本列島に人間が存在しているという裏付けになりました。

日本中が考古学ブームに沸いたのです。

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高松塚古墳壁画発見から始まった考古学ブーム

「ちょっとおかしくね?」と神の手に疑問を持った考古学者は何人もいました。

「F」による遺物発見は、江戸時代の地層から携帯電話が発見されるほどの不可思議だったのです。

けれど、それを声にする人はほとんどいませんでした。

「だって、発見されちゃってるんだから。」と結果オーライの現実に逆らえなかったのです。

 

「旧石器発掘ねつ造事件」がもたらしたもの

日本において3万年前よりもっと前に日本列島に人類が存在していたことの証明はされておらず、現在でも課題です。

日本の旧石器時代は現在確実に遡れるものが、立川ローム層最下部で出土した約3万5千年まえの資料です。

「F」の20年以上にわたるねつ造で、2000年以前の旧石器に関する記述は学問的に使えなくなりました。

「旧石器発掘ねつ造事件」により、今まで人類は旧石器時代に存在していたと明記していた社会科の教科書はすべて「嘘」ということになります。

また、旧石器時代に人類存在ありきで論文を書いていた多くの研究者たちにも影響を与えました。その論文の提出で大学や大学院を卒業した人たち、称号をもらっていた人たち。

そして遺跡発見で沸いていた地元では、「遺跡饅頭」「原人ラーメン」などの銘菓や地元名物、そしてお祭りなど、過疎化の阻止を夢見て計画し実行していたのです。

 

「F」のその後

「F」はその後解離性同一性障害を発症し、障害者認定を受けています。

「神の手」といわれた右人差し指と中指は自ら切断したそうです。

今回の番組では、出演や取材をお願いしたものの、心身の不調を理由に丁寧にお断りされたそうです。

村道雄氏は出演されて「旧石器発掘ねつ造事件」についてとても責任を感じてらっしゃるご様子でした。当時は「F」との共謀まで疑われました。

事件について本を出してらっしゃいます。

 

 

ねつ造いろいろ

犯罪ではないけど、世間を欺くことになった人。

他にもいたような。

有名なのは、「スタップ細胞はあります♡」と宣言した元科学者の女性でしょうか。

ゴーストライターの存在が明らかになった感音性難聴の音楽家とか、iPS細胞を使った世界初の心筋移植手術を実施したと誤解させた元・東京大学特任教授もどきの人とか?

経歴詐称なら「ホラッチョ」とかいうイケメンもいたね。

 

本人はともかく、それに振り回された周りの方々は今どうしているのだろう。

 

 

昨年の夏の考古学のレポートはこの「旧石器発掘ねつ造事件」を選びました。

いつかブログにしてみたいと思っていましたが、今回NHKアナザーストーリーズで取り上げられたので良い機会でした。

最後までお読みくださりありがとうございます。

 

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